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Cisco Packet Tracerを使ってネットワークを学習しよう! -1-

2023.03.28

学習のために試しにネットワークを組みたい様な場合、実機を使わないのであればGNS3に代表されるエミュレータソフトを利用するのが一般的です。しかし、GNS3は動作に実機のOSが必要になるため、OSを持っていない場合は利用することが出来ません。

そこで今回は、Ciscoが提供している「Cisco Packet Tracer」というシミュレータソフトを使って、ネットワーク学習を行う方法を紹介しようと思います。

なお、本記事はIPアドレス設定やスタティックルート設定など、Cisco IOSの一般的なコマンドを理解している方を対象に執筆しています。コマンド等は割愛、または記載する場合でも省略形にしますので、あらかじめご承知ください。

 

1.Cisco Packert Tracer(以下 Packert Tracer)とは

 

Ciscoが公式に提供しているシミュレータソフトです。「Cisco Networking Academy」というCiscoが運営しているネットワーク学習サイトから無料でダウンロードすることが出来ます。実機OSが不要なため、導入のハードルが低いのが特徴です。以下にメリット、デメリットをまとめました。

〇メリット
・無料で利用できる(※GNS3も無料で利用できます)。
・ルータ、スイッチを始めとしたCisco機器をシミュレート可能。
・【重要】実機のOSは不要。

〇デメリット
・あくまでもシミュレータであり、フォローされていない機能がある。
・GNS3の様に、機器を作成したり機器の性能を変更することは出来ない。ただし、ソフト側で用意しているモジュールを機器に追加することは可能。
・Cisco以外の機器はシミュレート出来ない。
・ソフトの起動時にCiscoアカウントのログインを求められる(地味だが面倒くさい)。

 

まとめると、Packet TracerはGNS3に比べて簡単に導入出来るメリットがある反面、GNS3ほどの自由度はありません。ただし、ネットワーク学習であればPackert Tracerでも充分ですし、なにより「実機OSは不要」という特大のメリットがあります。

「まずはPackert Tracerで学習して、実機OSが用意できる様になったらGNS3を使う」等、使い分けを行えばよいでしょう。

 

2.Packert Tracerのダウンロードから起動まで

Packert Tracerのダウンロード/インストールは、「Cisco Networking Academy」サイトから行います。

[URL]
https://www.netacad.com/ja

 

サイトのヘッダー部右端にある「ログイン」からサイトにログインします(Cisco Networking Academyのアカウント登録が必要です)。ログインしたら、以下のページに移動し、ページの指示にしたがってください。

[URL]
https://www.netacad.com/portal/resources/packet-tracer

 

本記事執筆時点の最新バージョンは 8.2.1 で、本記事も 8.2.1 で確認しています。サイトの説明によると、Packet Tracer  8.2 では以下のシステム要件を満たす必要があります。

〇シスコ パケットトレーサ 8.2(64 ビット):
・次のオペレーティングシステムのいずれかを搭載したコンピュータ:Microsoft Windows 8.1、10、11(64 ビット)、Ubuntu 20.04、22.04 LTS(64 ビット)、または MacOS 10.14 以降
・amd64(x86-64)CPU
・4 GB の空き RAM
・1.4 GB の空きディスク容量

〇シスコ パケットトレーサ 8.2(32 ビット):
・次のオペレーティングシステムのいずれかを搭載したコンピュータ:Microsoft Windows 8.1、10、11(32 ビット)
・x86 対応 CPU
・2 GB の空き RAM
・1.4 GB の空きディスク容量

 

Packet Tracerをインストールして起動すると、以下の様にPacket Tracerの画面が表示されます。

 

3.基本的なネットワークを作ってみよう

それでは、Packet Tracerで基本的なネットワークを作ってみましょう。下のネットワーク構成図を見てください。

 

2つのネットワークを繋げたシンプルな構成です。アメリカのシアトルとニューヨークに拠点があるケースを想定しています(※1)。
各拠点にはルータとスイッチが1台ずつ配置されています。各スイッチには、エンドデバイスとしてデスクトップPCとラップトップ(ノート)PCを1台ずつ接続しています。

※1:拠点名はCisco試験の問題っぽくしてみました(ニューヨークやヒューストンが割とよく出てくると思います)。

 

①各機器を配置する

まず、ルータを配置します。ルータやスイッチ、PCなどの機器類は、Packet Tracerの画面左下のエリアに配置されている「機器アイコン」から選択することができます。

ルータとスイッチは、左端の「Network Devices」アイコンから「Routers / Switches」と進み、機種を選択したら画面上にドラッグ&ドロップしてください。
今回はそれぞれ以下の機種を選択していますが、別の機種でも特に問題はありません。

・ルータ:2621XM
・スイッチ:2960-24TT

 

次に「End Devices」アイコン(「Network Devices」アイコンの右隣)から「PC」と「Laptop」を選びます。これは特に悩まないと思います。

 

②ケーブルを接続する

機器を配置したら次はケーブルを接続します。実運用を考えた場合、各機器の設定をすべて行った後に順次接続する方がよいと思いますが、今回は説明を簡略にするため、設定前にまとめて接続します。

 

「Connections」アイコン(「End Devices」アイコンの2つ隣の雷マーク)からケーブルを選択してください。ルータ間はクロスケーブル、その他はストレートケーブルで配線します。

配線の際に機器のポートを選ぶ必要があります。PCやLaptopはポートが1つなので問題ありませんが、ルータや(特に)スイッチはポート数が多いため、ご自分のマイルールを決めておくことをお勧めします。

 

例えば「ルータ間の接続は両端とも極力同じ番号を使う」とか「スイッチとエンドデバイスの接続はスイッチの若番ポートから順に使う」などです。こういうルールを決めておくと、ネットワーク図を見ただけで接続ポートが大体わかる様になりますので便利です。

 

③エンドデバイスの設定を行う

ここから設定に移ります。以降は基本的にシアトル拠点についてのみ説明しますが、ニューヨーク拠点でも同じ方法で設定を行ってください。

 

まずは、PCとLaptopにネットワーク情報を設定します。Packet Tracerの画面に配置したPC(この場合はシアトル拠点のPC1)をダブルクリックします。ダブルクリックするとポップアップが表示されますので「Desktop」タブ → 「IP Configuration」を選択します。

 

スイッチと接続しているInterface(この場合はFastEthernet 0)が表示されていることを確認し、「Static」ラジオボタンを選択して「IPv4 Address」「Subnet Mask」「Default Gateway」にそれぞれ値を入力します。

入力が終わったら「IP Configuration」バー右端の×ボタンを押して「Desktop」タブに戻ります。

 

次に「Desktop」タブ → 「Command Prompt」を選択します。[ipconfig]コマンドを実行し、先ほど「IP Configuration」で設定した値が表示されることを確認します。

 

確認が終わったら、試しに[ping {自分のIPアドレス}]を入力して実際にPingが通るか確認してみてもよいでしょう(自分に向けて打つので通ります)。以降、PCやLaptopからPingを打つ場合は「Command Prompt」からコマンドを入力してください。

 

PCの設定が終わったらLaptopも同様に設定します。シアトルとニューヨークのPCとLaptopの設定を行ったら、エンドデバイスの設定は終了です。

 

④ルータの設定を行う

次にルータの設定を行います。

 

まず、Packet Tracerの画面上に配置したルータアイコンをダブルクリックします。ポップアップが表示されますので「CLI」タブを選択します。CLI画面が表示されたら、インターフェースコンフィグレーションモードに移動してください。ルータとの接続ポート、スイッチとの接続ポートにそれぞれIPアドレスを設定し、no shutdownを行います。

 

〇4-1. ホスト名の設定

Router>
Router>en
Router#
Router#conf t
Router(config)#
Router(config)#hostname R1

 

〇4-2. R1ルータのWAN側の設定

R1(config)#int fa0/0
R1(config-if)#ip add 172.16.1.1 255.255.0.0
R1(config-if)#no shut

 

〇4-3. R1ルータのLAN側(GW)の設定

R1(config-if)#int fa0/1
R1(config-if)#ip add 192.166.1.1 255.255.255.0
R1(config-if)#no shut

 

設定が終わったら、特権モードに移動して[sh run]コマンドで設定を確認します。

 

 

⑤スイッチの設定を行う

せっかくなので、スイッチにもIPアドレスとデフォルトGWを設定してみましょう。管理VLAN(デフォルトだとVLAN1)にIPアドレスを設定します。

 

〇5-1. ホスト名の設定

Switch>
Switch>en
Switch#
Switch#conf t
Switch(config)#
Switch(config)#hostname S1

 

〇5-2. 管理VLANにIPアドレスを設定

S1(config)#int vlan 1
S1(config-if)#ip add 192.168.1.250 255.255.255.0
S1(config-if)#no shut

 

〇5-3. デフォルトGWの設定

S1(config)#ip default-gateway 192.168.1.254

 

ここまでの設定が終わったら、いったん[ping]コマンドで疎通確認をしてください。シアトル拠点、ニューヨーク拠点、それぞれの中であれば通信が可能になるはずです。

 

もし通信が出来ない場合は、各機器の接続に適切なケーブルを選択しているか、各機器の接続ポートの状態、各機器のネットワーク設定を確認してください。

この段階ではまだ他拠点への通信は出来ませんが、これは問題ありません。

 

 

⑥スタティックルートの設定

最後に、対向ネットワークへのスタティックルートをルータに設定します。

 

〇6-1. ルーティングテーブルの確認(スタティックルート設定前)

R1#sh ip route
C    172.16.0.0/16 is directly connected, FastEthernet0/0
C    192.168.1.0/24 is directly connected, FastEthernet0/1

 

〇6-2. スタティックルートの設定

R1# conf t
R1(config)#
R1(config)#ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 172.16.1.2
R1(config)#exit

 

〇6-3. ルーティングテーブルの確認(スタティックルート設定後)

R1#sh ip route
C    172.16.0.0/16 is directly connected, FastEthernet0/0
C    192.168.1.0/24 is directly connected, FastEthernet0/1
S    192.168.2.0/24 [1/0] via 172.16.1.2 ←R2へのスタティックルートが登録された

 

シアトル拠点、ニューヨーク拠点のルータに、それぞれ相手方のネットワークへのスタティックルートを登録すれば、相手方への通信も可能になります。PC1からPC2へのPingや、Lap2からLap1へのPingなど、いろいろ試してください。

 

4.まとめ

いかがでしょうか。今回は簡単なネットワーク設定に留めましたが、さらに台数を増やしたり、またはVLANを設定してみても良いと思います。

 

以上の様に、Packert Tracerを使うことでネットワーク学習のお役に立つと思いますので、ぜひ試してみてください。

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